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うるさいギャラリー

IN MY IMAGINARY ROOM  江上計太の部屋2

「江上計太秘蔵音盤聴取講座」を1ヶ月ほどお休みしてる理由。


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みんなもう知ってると思うけど、江上さんが今ART HUB 三樹荘で新作インスタレーションの滞在制作中です。3月17日からはその新作を展覧会として公開することも決まっています。先日俺が陣中見舞いに行ってみたところ、ゆっくりめではあるが確実に制作は進行している、という感じでした。(でも俺が行った時はカレーを作り溜めするとかいって大量のタマネギを刻んでいる最中だった)

と書いたところで、もしかしたら江上さんをよく知らないという人も、特に最近IAF SHOP*に来はじめた人はいつもカウンターの端にいてずっと誰かと話しているおじさん、という認識しかない人もいるかもしれないので、少し江上さんの紹介をしておこう。
江上計太は1951年生まれの現代美術家で現在64歳。IAF SHOP*には前身のIAF芸術研究室の最初の時期から30数年間ずっと居続けているというとんでもない猛者です。福岡美術界の重鎮にして良心、と言えるでしょう。モダニズムを自覚的に批判するモダニスト。そしてガレージ主義者。話しているとごくたまにローカルでマイナーであることについての矜持が垣間見える、こともある。よく分からんかもしれんけど江上さんと話す時は気合入れて行け!ってことです。本気で。

そんな江上さんが今作っているものは、絵が描けない江上さんが長い間迂回してきた結果、つまりインスタレーションの集大成であろうと思われます。この展覧会の後とうとう絵を描く、ことが出来るかどうか、それも見据えて展示を見ようと俺は思ってます。
あと、江上さんが書いた今回のためのテキストがあるのでそれも載せるけど、それ読んで俺は今回は特別だなぁと思ったので、その理由も最後に書いておきます。

IN MY IMAGINARY ROOM  江上計太の部屋2

会場:ART HUB 三樹荘
http://mikiso-project.jimdo.com/

滞在制作期間:
2016年2月15日(月)~3月13日(日)
制作公開日:
期間中毎週日曜日(2/21・24・3/6・13)13:00~18:00
展覧会期間:
2016年3月17日(木)~3月27日(日)
13:00~18:00開場 ※月・火・水休み
入場料:無料


江上計太 「サブタイトル『江上計太の部屋2』について」
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10年以上前のことになりますが、私はすでに『江上計太の部屋』と銘打った個展を、アジア美術館が入っているビルの地下2階の商業空間内にあったギャラリー・アートリエの企画展として開催しています。この展覧会タイトルは、もちろん私自身の発案によるものではなく、企画者側の要望として提案されたものでした。華やかなコマーシャル・スペース内の中心に位置するオープン・スペース・ギャラリーという、この展覧会タイトルが喚起するイメージとは全くかけ離れた不釣り合いの場所で、しかも十分な制作準備期間も無しに相当強引にでっちあげるしかないようなインスタント・インスタレーション展を、堂々と恥ずかしげもなく自分の個人名を冠したタイトルのもとに開催するということに対しては、当然ながら強い抵抗・違和感があったものの、私は結局、このタイトルに番号『1』を付加することを条件に受諾することにしました。つまり、正式な展覧会タイトルを『江上計太の部屋1』とすることで、この展覧会が一回限りで完結するものではなく、一種の連作として構想されたもので、その続編とされるべき『江上計太の部屋2』と銘打った展覧会が、いずれ近い将来開かれることになるであろうことを、数字『1』の付加によって事前に示唆的に自己表明しておいたのです。
数字『1』が発揮するこのような含意、暗示、示唆的意味作用の効果を、私自身はその当時取り組んでいたデューラーの有名な銅版画作品『メランコリアⅠ』をネタにした一連の模倣的パロディー・インスタレーション作品の試行実践を通じて習得していたのです。デューラー自身が、『メランコリア』というタイトルを冠した作品を、実際にシリーズを成す連作として構想していたかどうかは、おそらく永遠に謎のままなのでしょうが、『メランコリアⅠ』というタイトルに含まれる数字『Ⅰ』が、その作品に魅了された人に、『メランコリアⅡ』という現実には不在の幻の作品の存在を想像的に喚起させてしまう力を発揮するのです。
 ともあれ、私はデューラーの作品タイトル『メランコリアⅠ』を模倣して、その当時直面していた自らの展覧会のタイトルを『江上計太の部屋1』とすることで、言わばとりあえずその場を取り繕って切り抜けておいたのです。そしてその後10年以上の年月が経過したにもかかわらず、その来るべき続編に相当するような展覧会を実行する機会を得ることができないまま、現在に至ってしまったのですが、一年程前に三樹荘というスペースの存在を知って以来ずっと、私はやっとその続きの個展にチャレンジするのにこれほど相応しい場所は無いだろうという、漠然とした思いに想到していたのです。
 という次第で、ここに掲げる今回のこの『江上計太の部屋2』という個展タイトルは、サブタイトルとして格下げされているとはいえ、作家本人の自発的な立案によるものであることを予め表明しておくと同時に、今回の展覧会が10年以上前の未完の個展の単なる続編としてではなく、最終的な完結編として終結できるよう希願しておきたいと思います。
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俺が今回の展覧会が今までに無く特別だなぁと思うのは、江上さんはこの30年間で多くの作品を発表して来たし、いろんな賞も貰ったし、有名な展覧会にも呼ばれたりして、ビッグネームと思われる人も江上さんのことは認めているという場面も俺は何度も見てきたけども、よく考えたら江上さんは常に誰かに求められて作品を作り、展覧会に参加してきたワケで、つまり企画者(プロデューサーやキュレーター等)がいてその人が展覧会の全体を考え、コンセプトを生み出し、その実現のために江上計太の作るモノが必要だということで、それに江上さんは作家として企画者が作ろうとするものを批評的にとらえ(例え同意していたとしても)それに対峙する、ということをしてきたと思うんやけど、そのどれもが極論を言えば受動的であり、江上さん自らが「俺の表現を見て」というようなことは無かったし、その必要性を感じたこともあまり無いのではないかと思える(でも人にはそれを強く勧める。発表することの重要性の話は良くする)。しかしここにきて今回の展示である。これは間違いなく自分から言い出したことで、自分がやりたいからやる展示なのだ。福岡市美術館での初個展以来、江上計太30年ぶりの能動的なアクションなのだ。どう考えても特別である。

以下、制作中の写真を少しだけ。


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by iaf_satokei | 2016-03-08 22:06 | Comments(0)